古いアパートを残すより生前に建替えておく
節税できて収益もアップ
相続税2,150万円節税
課題
築50年、老朽化の進んだ木造アパートをどうする
村上さんは、夫婦2人暮しです。2人の子どもはそれぞれ結婚し、村上さん夫婦とは別のところに家を持って生活しています。村上さんの自宅の敷地が広かったので、アパートを建てることを勧めらました。まだ30代で会社員のときでしたので、やりくりが大変でしたが、思い切って建ててみたところ、駅にも近い立地が幸いし、ほとんど空きがなく順調な賃貸経営ができていました。しかし、築年数が50年近くになると老朽化が進み、設備も古くなって、空室が増えてきました。相当な費用をかけないと入居者が決まらないと言われており、そろそろ建て直したほうがいいのか、迷って相談に来られました。
土地はちょうど100坪あり、2人の子どもに半分ずつ相続させるつもりで、みなの合意はできています。よって、自宅は長男が、アパートは長女が相続するということになります。
財産の状況
節税効果を検証する。いまのうちに建て直す
対策(1)
相談に来られたときは、駅から徒歩5分かからない立地であっても、アパートは半分が空室になっていて、募集をしても思うように借り手が見つからない状況でした。木造ですので耐用年数は過ぎているものの、外装・内装を修繕しながら維持することもできないわけではありませんが、耐震性にも不安を抱えたままでは借り手も減っていき、相続した娘が苦労することは明白です。
しかし、村上さんが元気なうちに建替えをしてしまえば、相続税が節税でき、もう相続税はかからない範囲になると判断できました。現状では家を持つ長男が自宅を相続しても特例が使えず、アパートの空室があればその特例も使えません。
借入による賃貸マンション建築が節税となるイメージ
収支のバランスの取れる事業計画を立ててスタート
対策(2)
建替えるアパートはワンルーム9戸としてプランをつくり、収支のバランスが取れるような事業計画にする提案をしました。事業費1億900万円は銀行融資を受けますが、月額の家賃収入92万円に対して返済は35万円で、管理費5%を引いても半分以上はいったん手元に残るような計画です。
これで安心された村上さんは建替を決断し、入居者に建替の通知をして転居してもらうようにしました。スケジュールどおり、翌年の2月末に建物が完成すると、好立地で間取りプランもいいとすぐに満室になり、幸先のよいスタートになりました。
村上さんは以前より家族で話し合いをしながら進めてこられ、長男には隣接する自宅を渡し、このアパートは長女にとして、みなの合意も得られています。建築費の借入れに関しては将来相続する長女が連帯保証人になり、手続きを進めましたので、将来の遺産分割も問題はありません。それでも手続きが円滑になるようにと、村上さんは公正証書遺言を作成して子どもたちに知らせてあります。
生前対策後の節税イメージ
収益
融資を受けて古いアパートを建てなおした
対策効果の検証
ここがポイント
- 築年数の古いアパートは建替して節税効果をつくる
- 立地がよくても建物が古いと競争力は落ちる
- 借入返済は家賃収入の半分程度ですむような収支バランスを取る
駐車場は賃貸マンションを建てて収益を増やす
収益は6倍になり、法人設立して分散
相続税2億4,658万円節税
課題
2次相続時に1次相続以上に相続税がかかる
夫が亡くなったとき、杉山さんは、夫の財産の半分を相続しました。配偶者の特例によって杉山さんの相続税の納税は不要ですが、娘夫婦は1億円もの相続税を納付しなければならず、利用していない土地を売却して払ったのでした。
このまま節税対策をしなければ夫のとき以上の相続税がかかると説明されていましたので、相続手続きが終わると、今度は自分の相続税の節税対策に取り組むことにしました。夫の相続税は離れたところの土地を売却して足りましたが、次の納税となると自宅周辺の土地しかないため、減らしたくないという気持ちでした。
財産の状況
自宅と地続きの駐車場に賃貸住宅を建設する
対策(1)
1次相続のときから、杉山さんの2次相続の節税対策を提案しており、対策ができるように、自宅と隣接する砂利敷きの駐車場を相続し、活用する案を出していました。杉山さんが相続した駐車場は50台ほど止められますが、半分程度しか借り手がなく、料金を数カ月以上滞納している人や廃車を置いていく人などがいて、煩わしさばかりで負担になっていたのです。
駐車場経営の煩わしさを解消するため、また敷地全体の価値を高めるために、重厚感があり、差別化できる賃貸住宅を建設することを提案しました。
収益を増やしキャッシュの余裕をつくる
対策(2)
賃貸経営を永続するために、近隣調査をしたところ、ワンルームが多いことがわかり、ターゲットをワンルームとファミリータイプの中間層とし間取りを1LDKで計画、コンセプトは落ち着いた良質な賃貸住宅をイメージしました。事業計画時から入居者の応募も開始し、引き渡し時には、ほぼ満室でスムーズな賃貸経営を開始することができました。
杉山さんが相続した財産には現金が多くはないため、建築費などの事業資金は、全額銀行融資を受けて、自己資金は不要としました。相続税の節税対策になるだけでなく、土地活用によっていままではできなかったキャッシュの余裕が生まれるように設計しました。
相続税の節税対策と言えども、収支のバランスが取れて、手元にお金が残るようにするのが大前提です。この賃貸事業でいままでの駐車場収入の6倍になるような収支計画としましたので、相続税の節税をしながら、収益も増やすことができたのです。
土地有効の節税対策
生前対策後の節税効果
所得税節税のために賃貸管理法人を設立する
対策(3)
この賃貸事業により相続税の節税はできたのですが、次に考えないといけないことは杉山さんの収入が増えてしまい、所得税の負担が増えてしまうことです。現金が残っていくとせっかくの節税効果が半減してしまうことにもなります。
そこで杉山さんの所得を増やさないために、賃貸管理の法人を設立し、長女や孫が役員となって運営することを提案しました。法人が杉山さんのマンションを一括借上げすることで、所得を抑えることができ、娘や孫が役員となって法人を運営することで報酬を支払うことができます。法人にすると経費の枠も広がり、役員退職金の準備金として生命保険に加入することもでき、その費用も経費として計上できます。
会社を設立した場合の節税効果
効率の悪い駐車場に賃貸マンションを建てた
対策効果の検証
ここがポイント
- 1次相続のときに2次相続の節税対策も視野に入れた遺産分割をする
- 賃貸物件はコンセプトや間取り等で付加価値を付けることで差別化を図る
- 法人を設立して家族に収入を分散、所得税対策をする